街を歩いていると「これは何だ?」というものに出くわすことがあります。恐らく地下鉄銀座線の稲荷町駅を出ると、そのよなものを見ることになるでしょう。それは大きな鳥居です。
驚きと発見の宝庫!インパクトのある鳥居と歴史ある社殿が多くの人を魅了する下谷神社
この鳥居はビルとビルの間に建てられており、正直、周りの風景に対してミスマッチであるといわざるを得ません。しかしこの奥にはかの有名な下谷神社があるために、この周辺は多くの人で賑わっています。また毎年行われる下谷神社大祭は下町で一番早い夏祭りといわれており、その歴史は千年以上であるといわれています。恐らく下谷神社、そしてその周辺が一番盛り上がるのがこの下谷神社大祭の時期です。ではこの神社の歴史や詳細について見ていくことにしましょう。
都内最古の稲荷神社、下谷神社の歴史
この神社は「しもやじんじゃ」と読まれることがありますが、「したやじんじゃ」が正しい名前です。この神社は都内最古の稲荷神社であり、非常に歴史のある建造物です。730年に建設されたとされるこの神社は、当初は上野公園に存在していました。そして1627年に社地を上野山下に移動します。しかし土地が狭かったために、1680年に下谷広徳寺前に移動することになります。それから約192年後の1872年、現在の「下谷神社」の名前が付けられました。しかし1923年の関東大震災により社殿を焼失してしまいます。その後1931年に現在下谷神社が存在する場所での建設工事が始まり、その約3年後の1934年に現在の下谷神社が完成しました。
下谷神社の見どころ
インパクトのある赤い大きな鳥居は、下谷神社が興味を引く存在であることを物語っています。この鳥居を抜けてまっすぐ歩くと、再び鳥居を目にすることになります。
しかしこの鳥居は最初のものよりも小さく、その横には神社の敷地を囲っている柵が巡らされています。これら二つの鳥居は「一の鳥居」「二の鳥居」と呼ばれており、しっかりと区別されています。ちなみに最初に出くわす大きくて赤い鳥居が「一の鳥居」、そして神社の近くにある小さめの鳥居が「二の鳥居」です。
先にも述べたように、一見すると場違いに思える一の鳥居を見ると、誰もが強烈なインパクトを受けます。しかしこの鳥居自体にも見どころがあるのです。それはこの鳥居に取り付けられている扁額です。扁額の「下谷神社」という文字は、明治時代の薩摩藩士であった歴史的人物、東郷平八郎によって書かれたものです。
横山大観による天井画も必見!
そしてこの鳥居をくぐり抜けて真っすぐ歩き、二の鳥居をくぐると本堂にたどり着き、拝殿を見上げると天井画が目に入ってきます。この天井画は「生々流転」「夜桜」などの代表作を持つ有名な日本画家、横山大観によって描かれたものです。龍を描いたこの天井画は、完成してから天井に掲げられました。
しかし天井に掲げられた絵を下から見上げるのと、壁に掛けられた絵を見るのとでは見え方が異なるために、横山大観は書生達に絵を持ち上げさせて、下からそれを見上げながら描きました。こだわりを持って描かれたこの絵を見るために、下谷神社を訪れる人も大勢います。
寄席発祥之地記念碑
また下谷神社の門前を見ると寄席発祥之地記念碑が目に入ってきます。恐らく多くの人の頭の中には「なぜ?」という疑問が過ることでしょう。実は1798年に初代三笑亭可楽が現在の下谷神社の境内で寄席の看板をあげたのが、江戸で最初の噺家による落語の席だったといわれているのです。そのため下谷神社は寄席発祥の地としても知られているのです。ちなみのこの寄席発祥の地碑は1998年に建てられました。また「寄席発祥之地」の文字は柳家小さん師匠によって書かれたものです。そしてこの隣にはもう一つの石碑が建てられています。
この石碑には正岡子規が読んだ句が彫られています。「寄席はねて 上野の鐘の 夜長哉」という句は下谷神社が寄席発祥の地ということで読まれたもので、学生時代に寄席が大好きだった正岡子規ならではの表現であるといわれています。このように下谷神社には歴史的に有名な人物による作品が数々収められているのです。
アヒルと一緒に記念撮影
さらに有名人物ではないものの、境内には「有名アヒル」が存在します。このアヒルは境内に住み着いており、金網で囲まれた居住スペースを有しています。地元の人たちからは絶大な人気を得ており、散歩やランニングを行っている途中で神社に立ち寄り、このアヒルに餌をあげる人もいます。当然のことながら観光客にも人気があり、多くの人がこのアヒルを被写体として写真を撮っています。
出店も多く楽しめる!下谷神社大祭
冒頭でも述べましたが、下谷神社とその周辺が一番盛り上がるのが、下谷神社大祭が開催されるときです。「一番早い夏祭り」として知られる下谷神社大祭は、「まだ春では?」と思わせる時期に行われます。ちなみに2016年は5月6日から9日に行われました。7月、8月に行われる夏祭りが待ちきれないという人にとって、下谷神社大祭は非常に興奮する催し物であることに疑問の余地はありません。
この祭りの特徴は、二つの神輿による渡御です。一つは本社神輿の渡御で、これが行われる祭りを「本祭り」と呼びます。そしてもう一つは町会神輿の渡御で、これは「陰祭り」と呼ばれます。祭り期間中は130もの露店が立ち並び、祭りを盛り上げてくれます。
上野からもすぐ!ちょっと立ち寄るには最高の神社
下谷神社はお寺や神社などの建造物に興味がある人にお勧めの場所です。また一の鳥居の強烈なインパクトに惹かれてやって来る、若い人たちの姿も多くみられます。上記でも取り上げたように、歴史的有名人が残した作品が収められているために、そのようなものに興味がある人も楽しめる場所です。また長居をしなければ、家族で訪れることもできます。可愛いアヒルがいるために、小さな子どもも楽しむことができるからです。また入場料は無料であることから、気軽に立ち寄れる場所でもあります。また下谷神社大祭の時期は周辺地域が大きな盛り上がりを見せるために、活気のある下町の雰囲気を味わいたいという人は、祭りの時期にこの場所を訪れることができます。露店もたくさん建ち並ぶために、ちょっとした食べ歩きツアーを楽しむこともできます。
しかし下谷神社はそれほど長い時間をかけなくても全ての場所を見ることが可能であるために、ここだけを訪れるためにわざわざ東京まで足を運ぶ人はいません。それでも神社周辺にはたくさんの観光地があるために、有意義な一日を過ごすことが可能です。では下谷神社の所在地、そして周辺の様子についてご紹介したいと思います。
下谷神社へのアクセスと周辺の観光地
下谷神社の所在地は、〒110-0015、東京都台東区東上野3丁目3-29-8です。アクセスはJR山手線、上野駅から徒歩6分、地下鉄銀座線、稲荷町駅から徒歩2分、そして大江戸線新御徒町駅から徒歩5分です。またバスを利用する場合は都営バス、下谷神社前から徒歩2分となっています。
上野駅から御徒町駅までの線路沿いには有名なアメヤ横丁が存在しますので、下谷神社の観光後にここでの買い物を楽しむのもよいでしょう。また東へ約1キロほど行くと浅草地区に入ります。ここには有名な浅草寺があり、お寺や神社が好きであるという人は下谷神社を見た後、浅草寺に向かうこともできます。浅草駅の近くにある雷門を抜けると、そこには有名な仲見世通りがあります。全長約250メートルもの通りには、たくさんのお土産店や雑貨店などが並び、誰もが楽しめる場所です。下谷神社の落ち着いた雰囲気とは異なり、かなり活気のある場所ですので、仲見世通りを訪れた後にゆっくりと下谷神社を観光し、クールダウンするというのもよいかもしれません。