浅草観光でのお食事といえば、お蕎麦にお寿司、天ぷら・・・が思い浮かぶでしょうが、実は浅草にはおいしいうどん屋さんも充実しています。全国各地の特色あるうどんを浅草の地に紹介してくれるお店や、浅草の地元民たちに古くから愛される名店まで、ひとくちに浅草のうどんといっても実にさまざま。
浅草で美味しいうどんを食べよう!ランチにも便利なうどん屋さん
また、浅草観光の全ての食事機会を江戸の味でまとめようとすると結構な出費に・・なんてときにも、お財布に優しいうどんは味方してくれます。今回は、そんな浅草の美味しいうどん屋さんを紹介したいと思います。
叶屋:無化調の手打ち讃岐うどんを関西風の上品出汁で
伝法院通りの人気店がここ叶屋。一番人気は”ミニどんぶりとうどんのセット”¥980。どんぶりは海老天、アナゴ天、キス天、ネギトロから選ぶことができ、うどんはかけうどんとざるうどんから選ぶことができます。
讃岐風のコシのあるうどんには、いりこだしが使われることが多い中、こちらはかつお節や昆布が上品に薫る関西風のつゆ。そしてやや色が濃いのは江戸のおそばの影響でしょうか。カラリと揚がった海の幸のてんぷらや、中おちのワイルドなうまみが味わえるネギトロといった、浅草の雰囲気がふんだんに感じられるご飯ものと組み合わさったこの姿、うどんを食べ慣れた方にとっては安心感とともに浅草らしさを味わえ、いつもは丼派という方には、はるばる西のうどんの味に思いをはせる。
もちろん外国の方にとっては丼とうどんどちらも新鮮でしょう。方々からのお客さんを満足させる浅草の町と共通のイズムを、このうどんセットからは感じられます。
手打ちうどん家康:量もたっぷり!満足度の高い、しっかり歯ごたえうどん。
オレンジ通りの人気うどん店が、手打ちうどん家康浅草店。
本店は入谷で、浅草店は新しくできたお店です。結構、飲食店の分店が浅草にあるパターンはあり、本店との味や雰囲気の違いを味わってみるのも、ファンの楽しみの一つですね。
看板メニューの”家康うどん”¥1130は、大きな鉢に入った暖かいうどんに、牛豚鳥と3種類の肉を煮たものと、たっぷりのなめこ、それに揚げ玉、彩りよくカイワレとネギ、蒲鉾が添えられた、何ともにぎやかな一品。具だくさんのうどんというと、一緒に煮込むイメージがありますが、こちらは別々に煮て一緒の器に盛る炊き合わせのような感じです。
おいしいうどんと、様々な具が合わさった味の違いを楽しむ充実の時間は、ゆで上がり300gと一般的なお店よりも多めのうどんが、いつの間にかおなかの中におさまっていることでしょう。
かみや:サクッと入りやすい街の庶民味うどん屋さん
伝法院通りと浅草六区通りの交差点で愛されているのが「かみや」。
調理場とお客を隔てるものがコの字型のカウンターのみで、次々とうどんがゆでられ、てんぷらが揚げられていく・・。この職場にお邪魔して食事を受け取る感じが、浮ついた感じもなくかといって常連と一見の違いもない、江戸の庶民の粋な日常といった感じです。文化財の多い浅草において、このお店もまた文化財的な価値は高いのでは?と思ってしまいました。”月見うどん”¥550や、”ミニ牛スジ丼”¥400など、リーズナブルなのも魅力。店先に生ビールやホッピーののぼりがあるのも、六区通り沿いの場所柄らしく、お昼から一杯ひっかけてちょっと退廃的に行くもよし、他のお店で飲んで〆にうどんをすする、なんて使い方もいいですね。
羽曳や:大阪の味かすうどんを浅草で
浅草で大阪うどんを提供しているのが羽曳や。
店名の由来と思われる羽曳野市と言えば、奈良県に近い府南部の町で、最近では古市古墳群の世界遺産登録の機運が高まっていることでも話題ですよね。
豊かな自然がはぐくんだここ南河内の食文化は、後述の油かすという珍味も生み出しました。
“肉吸い卵かけごはんセット”¥790は、肉うどんのうどんを抜いたお吸い物と、生卵の組み合わせが優しいながらも力がつきそう。大阪の芸人のなじみの味としても知られているソウルフードです。
“かすうどん”¥580は、牛の小腸をカリッと上げた油かすが、透き通ったあっさりとしたつゆに浮かび、うどんを箸でたぐればうっすらと表面に香ばしい油がコーティングされるという、大阪ではおなじみの一品。うどんはてんぷらや油揚げで油っ気を加えるものと思い込んでいた私のような東の人間には、実に新鮮で、絶妙のジャンク感が繊細な関西うどんに加わっておいしいです。
カナメキッチン:浅草の居酒屋さんで食べるモチモチ伊勢うどん
つくばエクスプレス浅草駅を上の側から出て少し行くとあるのがカナメキッチン。
カツオのヅケやサメのタレなどの伊勢の味とともにお酒がおいしいお店で、”伊勢うどん”500円も名物。
出雲大社のある出雲では、小さなお重に多くの薬味が特徴の出雲そばが名物ですが、伊勢神宮のある伊勢の名物麺料理が、この伊勢うどんというわけです。
多くの参詣客でにぎわうこれらの都市では、ファストフード的に提供するように進化した麺料理が発達したものと考えられます。そんな伊勢うどん、極太麺を長時間ゆでることで、独特のふわふわもちもち食感のうどんとなり、つゆではなくいりこダシが効いた黒い醤油ダレをからめていただくスタイルです。
若者を中心に汁なしラーメンが人気を博していますが、意外とそのルーツは伊勢うどんにあるのかも知れませんね。
釜う:朝ごはんにも!安くて種類の多い便利なうどん屋
花やしきの隣で人気を博すお店、釜う。土日は朝9:00からお店を開いているのも好評です。
全国においしいうどんは数あれど、うどん県を自称するほどの情熱は、香川県をおいてほかにはないでしょう。麺を打つ時に強烈にグルテンを結合させて、しなやかかつ噛み応えよく仕上げたうどんに、魚介だしの中でも特に濃厚なうまみを与えるいりこをふんだんに使ったつゆをあわせるというエッジの立った味は、うどんの聖地で切磋琢磨された末に行きついた形にすら思えるものです。
“ぶっかけ小”で¥320というリーズナブルさも嬉しく、100円代からのてんぷらをお好みで追加しても、お財布にはやさしいですね。野菜天やかしわ天といった定番から、四国九州の味であるじゃこ天(魚のすり身のてんぷら)まで、何をトッピングするか目移りしちゃいます。
利右衛門:路地裏に現れるお酒の飲めるうどん屋さん
花やしきの西、六区と瓢通りの界隈にある小さな路地。うどんの看板に誘われるまま、人通りも少ない細い道を進んでいくと、利右衛門の提灯と優しいおかみさんが迎えてくれます。比較的新しいお店ながら、この隠れ家感は浅草に慣れた人が、ちょっと穏やかな場所で食べたいなという通向けのニーズに応えてくれそうです。
この店はうどんとともに女将さんの出身地である宮崎の料理も充実しており、”宮崎地鶏”¥500、”辛みそモツ煮”¥500などで焼酎を楽しむのも一興です。
“釜揚げうどん”が¥400、”ぶっかけうどん”が¥500。うどんは、番人に愛されそうなバランスの良い味わい。口ではじけるごまの香りと、つゆの柑橘のさわやかさが、どことなく南国宮崎を感じさせてくれます。
但馬庵:朝ごはんにも!安くて種類の多い便利なうどん屋
雷門通りと国際通りの角、雷門1丁目にあるのが但馬庵。”カレイの煮つけセット”¥900、”ミニあさり丼セット”¥880などセットメニューも豊富です。
どのメニューもそばとうどんから麺を選べるほか、柔らかめに炊かれたご飯のおいしさ、サバのみそ煮やイカの田舎煮など、魚料理もおいしいという嬉しいお店。
うどんは手打ちで、スルスルとのどごしを味わうというよりも、かみしめるほどに粉のうまみを感じるタイプのもの。このタイプの麺は若者に人気がありますよね。ひなびた店構えに、あめ色の建具の醸し出す雰囲気がレトロで落ち着く一方、この食べごたえのあるうどんというのは乙なコントラストではありませんか。煮込み系のうどんも充実し、カレー南蛮うどん¥750や、けんちんうどん¥800もお薦めです。
翁そば:大正から庶民の味方!たっぷりのカレー南蛮は必食
こちらの翁そばは、創業が大正年間。おそらく往時は鮮やかな赤紅色だったとおぼしき外壁が、過ぎゆく時を刻むように色あせ、煤けた様子は、何とも言えぬ郷愁とこれからいただくうどんへの期待を抱かせてくれます。
忙しく働く職人さんの姿も、おかみさんの心のこもった応対も、代が代わっても変わらない浅草の暖かさが息づいており、お客さんがひきも切らないのはここで特別な時間を味わいにくるのだとうなずけるのです。”カレー南蛮うどん”¥650が人気で、餅や生卵を追加トッピングするのが通の楽しみかた。もう一つの人気メニューが、”たぬきうどん”¥500。香ばしい揚げ玉たっぷりに、温は長ネギ、冷はホウレンソウとなるとというトッピングが懐かしく、おいしさともに古い友人と再会したような気分になることでしょう。
うどん&茶房〜るすみだ:駅直結エキミセの便利なうどん屋さん
東武線浅草駅隣接のエキミセは、ショッピングにお土産選びにと、ルネサンス調の建物の美しさも相まって、浅草の顔の一つ。最上階7階のフロアはレストランが充実しており、そこにうどん&茶房〜るすみだはあります。
明るく清潔感のある店内は、どちらかというとカフェ寄りかな?という感じで、浅草を歩いてスカイツリーラインで移動する前に、ちょっとくつろぐ・・。そんな時間を過ごすのにもよさそうです。”フルーツパフェ”¥500などの甘味も人気ですが、うどんは国産の小麦のみを使用するというこだわりようで、盛り付けもややひらたいお皿に、薬味が彩りよく添えられて見た目も美しいものです。人気は”釜玉めんたいうどん”¥680。駅ビルの中ですので、親子連れや大人数でも入りやすいのが嬉しいですね。
■うどん、ちょっとイイ話
小麦も実は、お米と同じイネ科の植物。
湿潤な気候をこのみ、生産に大量の水を要する米に対して、小麦は礼儀を乾燥した気候をこのんで育ちます。実は今も全世界の水消費量の半分が農業に使われており、もしコメのような水を多く使う作物しかなかったとしたら、おそらくここまで潤沢にカロリーを生産できてはおらず、
人類は麦をうまく食生活に取り入れることで人口を増やしてきたことがうかがえるのです
。
小麦畑を見てみると、小麦を食べにアブラムシなどの小さな虫がよって来て、それを少し大きな昆虫が食べて、昆虫をカエルやげっ歯類等の小動物が食べて、小動物を鳥が食べる。そんな自然の営みの舞台にもなっています。米を育てる水田も、水生昆虫やタニシ、サギ等の鳥を見ることができます。これがもし、人類が肉のみを食べるようになったら、森林が伐採されて牧畜用地が新たに必要になり、原生林に暮らす動植物が失われてしまいますし、そもそも飼料を得るために、穀物用の農地も新たに開発しなければならないかもしれません。うどんなどの小麦食品を食生活に取り入れることは、環境を守る上でも重要なことなのですね。
浅草と言う場所、蕎麦や天丼の方が印象強いですが、うどんという選択肢を選んでみるのも、たまには良いかもしれませんね。