浅草のグルメは和食のみにとどまりません。
古くから日本人に活力を与えてきたささやかなハレのごちそう、中華料理の充実ぶりは、浅草を2度3度と訪れるうちに、自然と浅草中華も試してみようかと思わせる求心力があります。
特に昭和の懐かしい街中華の魅力をたたえたお店は多く、しかも繁盛ぶりは往時のまま。地方出身者の方は、いつか食べた街中華の味を思い出してほろりとくるかもしれません。
さらに、テイクアウト主体の点心の店や、コース料理や高級食材が売りのお店、本場中国の味をそのまま味わえるお店と、中華を原種に、あっちこっちと分岐して進化した花が百花繚乱といった様相を呈していますよ。
さあ、古都浅草で大家好!
浅草の中華を侮るなかれ!大衆中華から高級中華まで浅草で中華を楽しもう。
十八番:これぞ日本の大衆中華!食事にもお酒を飲むにもオススメです。
つくばエクスプレス浅草駅から上野方面へと歩き、西浅草川村公園の近くにあるのがここ十八番。多彩なメニューが目白押しの中、特に好評なのが、”かに玉そば”と”かに玉丼”ともに¥800。
素朴な店構えからは打って変わって、蟹の身がごろごろと入り、ふっくらとした卵は分厚く、ほのかな酸味の醤油餡になみなみと浸された姿と味は、注文した人の心を豊かにしてくれるほどのものです。
ビールや紹興酒もグイグイ進んでしまいますが、十八番にきたらぜひ頼んでほしいのが”かっぱばし割”¥450。これはチューハイにたっぷりのキュウリの千切りが入ったもので、清涼感が中華料理にぴったりです。ふと思ったのですが、こういった街中華では客席と厨房が近くて、強火でいためる大きな音が、「静かにしすぎなくていいんだ。」と安心させて、連れの人との会話が弾んだりしますし、逆に一人黙って佇んで料理を待っていても暗くならない。この懐の広さも街中華の魅力の一つと言えるでしょう。
龍園:最高峰の中華を浅草で。工夫の凝らされたコース料理は予約必須!
つくばエクスプレス浅草駅をA2出口から降り、感應稲荷神社に向けて歩くとすぐに龍園はあります。
ランチは¥2500のコース、夜は¥6000のコース料理のみというスタイルで、メニューも季節で刻々と変わりますが、一例をあげますとアユの春巻き。中国では川魚の方が海の魚よりも価値が高いとする価値観もあり、わが国の川魚の代表であるアユと、中華料理の技法の組み合わせは味の頂点のひとつといえそうです。皮で包まれて適度にしっとりとした鮎、そして肝のほろ苦さを生かした深みのあるソース・・。ここでしか味わえないでしょう。フカヒレスープや、和牛とアスパラのオイスターソースいためなどの、王道高級中華に、こういった新たな創意工夫が凝らされた料理が加わっているところに、龍園のコース料理の素晴らしさがあります。
肉まんも具は何とスッポンで、ほかの肉にはない軽やかかつ密度の高いうまみとさらりとした脂が楽しめます。デザートに使われる果物も、夕張メロンや佐藤錦など、日本各地の上質な材料を生かしています。中華料理をベースとしながらも、西洋、そして日本の良さも取り入れた美食の世界が貴方をまっているのです。
点心爛漫:路地裏の小さなお店でリーズナブルに美味い点心を!
東本願寺の裏手にある点心のお店が点心爛漫。
一説によると点心の起源は中国のお坊さんが厳しい修行の合い間に食べたおやつだといいます。私たちは修業ではなくて、浅草観光に来ただけだけど、点心をいただいていいのかな?いいんです!行っちゃいましょう。
“ランチ点心セット”¥500は、ギョーザ5個にシュウマイ2個、ライス、わかめスープ、ザーサイと、これでワンコイン?という充実ぶり。
ギョーザはモチっとした厚めの皮に、たっぷりの肉とキャベツ、にらが入った餡がぎっしり。厚めの皮にぎっしりと具を包む職人技ですね。ニンニクを入れない中国スタイルなので、これから人と会うという方も安心して召上れます。
“ショウロンポウ”4個¥350や、シューマイ、春巻き、腸詰めのおつまみ3点にジョッキビールがついた”生ビールセット”¥580も人気。ギョーザはお持ち帰りもできますよ。
セキネ:浅草のお笑い芸人も御用達!持ち帰りの肉まんとシュウマイ
新仲見世通りと六区ブロードウエーの角、浅草寺の南西に位置する、肉まんと焼売の老舗がセキネ。
“焼売”1箱10個入り¥510は、薄い皮に包まれて、ひき肉がぎっしり。小ぶりな見た目とは裏腹に、お口の中は肉のうまみにあふれます。
お肉が食べたいのなら、ハンバーグなどにすればと思いがちですが、やっぱり焼売にしかない魅力ってありますよね。肉が皮に閉じこめられているから?それとも蒸すという調理法のせいでしょうか?この焼売にしかない味の秘密は何となく謎のまま、セキネの味がこのまま続いてほしいというのがファン本音です。
肉まん1個¥260も、おみやげに食べ歩きにと大人気。齧ってみると中で皮と肉が分離しているのが最大の特徴で、そうか!肉まんって、肉そぼろが入ったまんじゅうじゃなくて、ジューシィで丸々とした肉団子を蒸しパンで包んで食べる、一種のハンバーガー的な料理だったんだと、目からうろこが落ちること請け合いです。
ぼたん:地元の人に愛される街の中華料理を浅草駅前で
街中華の実力派が、ここぼたん。
あっさりとした”醤油ラーメン”¥550や、”五目焼きそば”¥800など、街中華の定番メニューが勢ぞろいするなかでも、人気は”レバニラいため”¥600。ここぼたんのレバニラは、比較的濃い醤油の色が付いたタイプで、カンカンに熱せられたなべ肌によって、レバーや野菜に絶妙にたれのコゲがまとわれ、目の前に供された瞬間からえもいわれぬ香ばしさが鼻をくすぐります。
柔らかくトロリとクリーミーなレバー、しゃきしゃきホクホクのニラとモヤシ。まさに黄金の組み合わせですね。
中華なべを鮮やかに振って、ラードのコクがたまらない”チャーハン”¥700を作ったかと思えば、同じ鍋でケチャップがしっとりとおいしい”チキンライス”¥700まで作ってしまうというのも、街中華らしい柔軟さです。飲み物ではホッピー¥450の焼酎がかなり濃いという、ロックな一面も垣間見せます。ロック(六区だけど、お店の住所は花川戸・・・お後がよろしいようで。
福楽:浅草の四川料理に痺れよう!
つくばエクスプレスを西浅草側で降りて、国際通りを少し南下するとあるのが福楽。食べ飲み放題が¥2980で楽しめるため、低予算で酒池肉林の気分になれるのはうれしい限り。
豚肉と野菜、卵を炒めたおかずなどの”日替わり定食”¥650は、量も多く、ご飯おかわり自由とあって、バリバリ働くお客さんの味方です。
そしてなんといっても、ここ福楽は四川料理の店。真っ赤なトウガラシとしびれる花椒がたっぷりの、”マーラー刀削麺”¥750、”本格四川風牛肉煮込み”¥950、”本格麻婆豆腐”¥1000あたりを攻めたいところですね。折しもこの記事を書いている今、高校野球が真っ盛り。テレビからはX-JAPANの紅のメロディーが聞こえてきます。あなたもここ浅草の福楽で、唐辛子の紅に染まってみませんか?
老上海:名店で修行した味を浅草で気軽に楽しむ
言問い橋のたもとにあり、地元の方や通に愛される本格中華のお店が老上海。人気メニューの”特性酢辛麺”¥900は、注文時に申告するとライス一膳のサービス付き。
厨房から聞こえる威勢の良い調理中の声、このご時世には珍しく、店での喫煙にもおおらかな空気は、年配の方には忘れかけていた昭和の思い出が、そして若い人には、本場中国のアジア的おおらかさを感じ、魅了されることでしょう。
店主は赤坂の名店で30年の修業を経た方で、そのためか料理の端々に隠しきれない高級中華の雰囲気が漂います。”酢豚定食”¥800など野菜のしゃきしゃきした甘みが生かされ手組が消えたいためもの。
中華の土台ともいえる上湯スープの香り高さ、キクラゲやザーサイ、胡麻といった名わき役のアクセント。どのリーズナブルな料理にも、そういった細やかな仕事がなされているのです。そして、”フカヒレの姿煮”¥4200や、”北京ダック”¥2100といった特別料理で、いつでも本気を見せる準備が整っているのも、厨士の矜持ですね。
佳鼎火鍋屋:1人火鍋ランチが人気の中華料理
つくばエクスプレス浅草駅を西浅草方面のA2出口から出て、国際通りを南下するとすぐにあるのが佳鼎火鍋屋。
“火鍋セット”¥880は、中国本土では大鍋を大人数でつつくのが一般的な火鍋を、忙しく個食の機会が多い日本人に合わせて、一人鍋として楽しませてくれるとあって、昼夜を問わず人気です。
肉の種類は牛、豚、羊、モツ、海鮮から選べ、鍋のスープの空さも絡みのない白湯から、口中を突き刺す大辛まで、お好みで選べます。本場の雰囲気を味わいたいなら、やはり羊肉に、ある程度上の辛さをチョイスでしょうか。
羊肉には体熱産生作用があるため、鍋のスパイシーさと合わさって汗はだらだら。そして羊特有のちょっとワイルドな風味は、香辛料と合わさってちょうどいい芳香になっているところも見事です。辛旨の火鍋ではご飯も進むことを見越してか、ご飯おかわり自由というのもうれしいですね。
中華ダイニングいい田:ワンコインランチが人気日式中華料理や
西浅草の浅草ビューホテルの裏手に構えながら、庶民的な中華料理を気軽に味わわせてくれるのが中華ダイニングいいだ。
安くてボリュームのある”回鍋肉丼”¥490、”焼き肉定食”¥600などが人気で、ランチは”手づくり餃子”3個が +¥170で頼めるところもグッド。”チンジャオロースー”¥750、エビチリ¥980など定番メニューもオーダーすれば、卓の上は一気に華やかになりますね。
比較的新しいお店ながら、日本風に若干のアレンジが入り、番人がホッとするこの味は、まさに街中華のそれです。こういうお店が新しくできて、街中華文化が続いていくと何だかうれしいですね。高尚な文化財を鑑賞したりして集中した心を、飾らない中華でほぐすと考えれば、高級ホテルの隣というのはむしろ好立地かも・・なんて、食後のお茶をすすりながら考えたのでした。
餃子の王様:野菜がメインの餃子を浅草で
オレンジ通りと仲見世通りの間、公会堂通りに、おいしそうなショーケースを披露しているのが餃子の王様。店名にもなっている自慢の”王様の餃子”6個¥420は、焼き目がカリッとしていて、表面に油のグロスが少なく、あくまで少量の油で蒸し焼きにしたのがひと目でわかるもの。
このタイプは、皮の香ばしさがちょっと「おやき」っぽくて、小麦粉のうまみが存分に味わえます。餃子はいろいろな機会に食べられる料理ですが、この餃子の風味は特にきらりと光るものがありますね。
餃子の餡は野菜の甘みがジューシィでたまりません。もう一つの人気メニューが”タンメン”¥630。昔ながらの鶏ガラと豚骨の澄んだスープに、手早く炒められて色鮮やかになったモヤシや白菜、キクラゲ・・。こちらも動物系のだしをベースに野菜のおいしさが主役となった、体にも心にも優しい美味です。これらにビールでも合わせた日には・・・もう、餃子の王様の威光にかしづくほかはありません!
馬賊:もちもち手打ち麺の馬賊冷やし中華は必食!
浅草の雷門と、田原町の中間くらいにあるもちもち手打ち麺が人気の馬賊。錦糸町にもある人気店です。ここの特徴は何と言っても「バーン!!バーーン!!」と店内に響き渡る音で打たれる手打ち麺。温かい麺も人気ですが、個人的にお勧めしたいのは「冷やし中華」。馬賊冷やし中華は1300円と値段はしますが、手打ち麺と、ごまの効いた汁。そして単品でも人気のチャーシューなど具材がこれでもかと盛られ、とにかく美味。さっぱりスッキリの冷やし中華の概念を打ち破る、ボリュームも満足度も満点の冷やし中華です。