1922年に他界した小説家の森鴎外ですが、彼が残した作品はいまだに多くの人によって愛されています。恐らく森鴎外についてあまりよく知らないという人でも、「舞姫」や「青年」といった小説の名前を聞いたことがあるかもしれません。そして彼は小説家であっただけではなく、評論家、翻訳家、陸軍軍医、そして官僚としても活躍した人物です。このように多才であった森鴎外のファンは多く、その生い立ちや作品について興味を抱いている人も大勢います。
森鴎外ファンの聖地!水月ホテル鴎外荘
そんな森鴎外にゆかりのある地を訪れ、彼についてより多くのことを学ぶ旅に出るのも悪くはありません。彼は10歳の時に父親と一緒に上京します。その後ドイツに留学し、再び日本に戻ってきたときに住んでいた家が現在ホテルとして存在しており、宿泊することができます。森鴎外がどのようなところで時を過ごし、どのような思いで作品を制作したのかを身をもって感じたいという人に、ここへの宿泊をお勧めします。ではこのホテルの見どころについて見ていくことにしましょう。
森鴎外が執筆した場所に泊まる、水月ホテル鴎外荘
このホテルの名前は「水月ホテル鴎外荘」です。森鴎外はドイツへ留学した後、28歳で海軍中将赤松則良の長女である登志子と結婚します。その後、現在の台東区、池之端3丁目に位置する上野花園町の赤松家に住むことになります。この家が現在の「水月ホテル鴎外荘」というわけです。実はこの家であの有名作品である「舞姫」や「うたかたの記」、そして「於母影」などが執筆されました。彼が「舞姫」を執筆した日本間は現在でもきれいに保存されており、宴会場やコンサート会場として使用されています。ちなみにこの部屋は「舞姫の間」と名付けられています。
美しい日本庭園と舞姫の碑を見学!
このホテルを訪れた際、「舞姫の間」を訪れるのは必須です。しかしその他にも見どころはたくさんあります。そのうちの一つは日本庭園です。美しい緑の草木や、池の中の鯉などは見る人の心を落ち着かせてくれます。またここには「舞姫の碑」、そして「於母影の碑」という2つの文学碑があります。これらは森鷗外文学発祥の地を記念して建立されました。このようなものを写真に収めるのも、このホテルでの楽しみ方の一つとなるに違いありません。
親族でのお祝いなどにぴったりな個室
またこのホテルには家族や友人など、少人数で利用することができる「於母影の間」という名前の特別室が用意されています。この部屋の雰囲気は古き良き時代の日本を思い起こさせるもので、尚且つ坪庭を見ることができる大きな窓が備わっています。タイムスリップしたような空間で、和やかな時間を過ごすことができるお勧めの場所の一つです。
ちなみの「於母影の間」の最大収容人数は12名となっています。またさらにこじんまりとした空間があり、そこは「蔵の間」という名前が付けられた土蔵造りの書斎風の部屋です。最大収容人数は6名で、和室に洋風のテーブルや椅子を置いたモダン文化を採用しています。ここでも森鴎外が過ごした明治時代のおしゃれな空間を楽しむことができます。この他にも2002年に復元した玄関は、明治時代の雰囲気を意識した味のあるものとなっています。ここも見逃すことのできないポイントです。
温泉が最大の目玉!水月ホテル鴎外荘
森鴎外が作品を書き下ろした場所を尋ねるだけでも気分が高揚しますが、せっかくホテルに宿泊するのだから、日ごろの疲れを癒したいと誰もが思うはずです。そのような人にお勧めなのが「天然鴎外温泉」です。「水月ホテル鴎外荘」のロビーを入ると、「天然鴎外温泉」という赤い文字が目に入ってきます。ここが温泉のエントランスとなります。この先を進むと有名な「天然鴎外温泉」にたどり着きます。営業時間は10時から25時までとなっており、最終受け付けは24時となっています。また宿泊客ではなくても入浴料金1,650円を支払えば、誰でも入ることができます。あまり知られていないかもしれませんが、「天然鴎外温泉」は都内第一号に認定され天然温泉で、歴史のある温泉施設なのです。お湯の成分として重炭酸ソーダが含まれており、神経痛やリュウマチの治療に効果的であり、尚且つ肌を美しくしてくれます。
まず最初に訪れることになるのは脱衣所です。この温泉の脱衣所もレトロな感じを醸し出しています。壁紙にはおしゃれなチェック柄が使用されていますが、えんじ色のマッサージチェアや壁掛けドライヤーなどが設置されており、ここでも古き良き日本を思い出させる情景を目にすることになります。また若い人たちにとってみれば、こうした情景は逆に新鮮味のあるものとして目に映るはずです。お風呂場は二種類で、一つは檜の漆塗りの浴槽を使用した「檜の湯」、そしてもう一つは天然大理石の浴槽を使用した「福の湯」です。
天然温泉の檜の湯と福の湯
まず「檜の湯」ですが、ここで使用されている古代檜漆塗り風呂は、樹齢2000年の檜によって作られています。尚且つこれらの檜は柾目の美しい厳選されたもののみが使用されています。そして先にも述べたように、お湯の種類はカルシウムやラジウムなどを含んだ重炭酸ソーダ温泉となっています。そして「檜の湯」の入り口には、「天然温泉第1号」と書かれた板が立てかけられています。しかしこの板は単なる看板ではありません。これは温泉の温度が熱い時に湯船をかきまわすときに使用する、湯もみ板なのです。そのため係りの人がお湯の状態を確認し、湯もみを行う姿が見られることもあります。
続いて「福の湯」ですが、ここは大理石で作られた贅沢なお風呂となっています。使用されている温泉は「檜の湯」と同様です。これらのお風呂は朝と晩で男湯と女湯が順番に入れ替わるシステムになっているために、宿泊客であればどちらも利用することができます。一般的に日帰り入浴の場合はどちらか一つになってしまいますが、どうしても二種類のお風呂に入ってみたいという人は、異なる時刻に「天然鴎外温泉」を訪れることができます。
水月ホテル鴎外荘の所在地とアクセス
この「水月ホテル鴎外荘」の所在地は、〒110-0008、東京都台東区池之端3丁目3−3−21です。またアクセスは、地下鉄千代田線「根津駅」不忍池方面口から徒歩5分、京成線「京成上野駅」公園口から徒歩7分、そしてJR線「上野駅」公園口、不忍口から徒歩12分となっています。また飛行機を使用して東京都を訪れる方は、羽田空港第1ビル駅から東京モノレール空港快速で浜松町駅まで行き、その後、JR京浜東北に乗り換えて上野駅まで行くことができます。また成田空港からの場合、京成スカイライナーを利用して成田空港駅から上野駅まで行くことができます。羽田空港からのアクセス所要時間は30分で、成田空港からの場合は45分です。
値段もリーズナブル!上野で泊まるなら水月ホテル鴎外荘
森鴎外が住んでいた家を改装して建てられたホテルということで、宿泊費が高額なのではないかと心配なさる方もおられるかもしれませんが、一人での宿泊は5,750円から可能であり、非常にリーズナブルです。また正午から夕方にかけてホテル内の見学や食事、そして温泉を楽しむ日帰りプランなども用意されており、宿泊するだけの時間はないものの、森鴎外が作品を書き下ろした家でゆっくりとした時間を過ごしたいという人でも十分に楽しむことができます。また日帰りプランで提供される食事は非常に豪華であるために、特別な会合などを持つ場合でも、このプランを利用することができます。遠方からも訪れる人が多く、東京の観光名所となっているこの「水月ホテル鴎外荘」は、森鴎外ファンや文学に興味がある人にお勧めの場所です。