土用の丑の日とは?鰻を食べる日本文化を知ろう!
丑の日、とよく言いますが、その言われや由来についてはよく知らないもの。土用の丑の日に鰻を食べる前に、なんとなく情報を知っておくと、よりその日を楽しめるかもしれません。
土用の日の丑の日は年に何度もある!?
「土用」とは四立、つまり立春、立夏、立秋、立冬の前の18日間、もしくは19日間のことを言います。ちなみに立春は2月4日頃、立夏は5月5日頃、立秋は8月7日頃、そして立冬は11月7日頃です。つまりこれらの日付よりも前の約18日間が「土用」に相当します。
そして「丑の日」の「丑」ですが、これは十二支の丑のことです。一般的に年を数えるときに使われる十二支ですが、実のところ日にちを数えるときにも用いられます。「子」から始まり「亥」で終わるというサイクルを繰り返していくために、1ヶ月で2週半することになります。そして干支は全部で12ですから、「丑の日」は12日に一度訪れるわけです。
つまり「土用の丑の日」は四立の前の18日間で、十二支が「丑の日」のことを言います。
ちなみに2月は閏年を抜かせば28日しかありませんし、30日の月と31日の月が存在するために、「土用の丑の日」は毎年少しずつずれていきます。もちろん「土用の丑の日」はどの季節にも存在します。ではなぜ立春前、つまり夏の時期の「土用の丑の日」にうなぎを食べることが習慣となったのでしょうか?
江戸時代の商戦から始まった鰻の日
丑の日はそもそも体調を崩しやすい時期とも言われています。その中で、うしの日の「う」にちなみ、「う」のつく元気になる食べ物ををいただくという風習があり、その中でスタミナのつく鰻が当てはまり、江戸時代に夏の「土用の丑の日」にうなぎを食べることが習慣化、その習慣がそのまま残っているというのが有力な説であると言われています。
また、冬に旬を迎えるうなぎが売れなくなる夏の時期にうなぎを食べることを促し、販売促進を図ったことから夏の「土用の丑の日」イコールうなぎという考えを人々の頭に植え込んだことがきっかけであるともされています。こちらが非常に伝統的なイメージのある『土曜の丑の日に鰻を食べる』という行動が、実はバレンタインデーにはチョコを・・・と言った販促的なことから始まっていると思うと、なんだか面白いですよね。
丑の日に食べるといい「う」の付く食べ物
土用の丑の日に食べるといいものは、実は鰻だけではありません。どのような食べ物を食べるのが良いのでしょうか?
1.うどんで夏バテでも食べやすいエネルギー食
うどんは消化が良く、炭水化物を主とする食べ物です。炭水化物はエネルギーを作り出す栄養素であるために、夏バテなどで疲れた体に活力を与える役割を果たします。もともとうどんはのど越しの良い食べ物ですし、冷やしたうどんを麺つゆなどにつけて食べるなら、暑い夏でも食が進みます。
2.梅干しで疲労回復効果!
梅干しには疲労回復を促すクエン酸が含まれています。そのためこの食べ物も夏バテの予防や体力の回復に貢献してくれます。加えて梅干しの酸味は消化器官を刺激し、消化酵素の分泌を促します。夏場は食欲が低下する季節ですが、梅干しのこの作用が食欲を増進してくれます。また梅干しには食べ物が腐るの防ぐ働きもあるために、夏場のお弁当などに入れると大きな役割を果たします。
3.瓜で体を冷やして涼やかに
名前に「瓜」が付く食べ物には、夏の暑い時期に体を冷やす効果があります。たとえば胡瓜、西瓜、南瓜、そして苦瓜にはカリウムが含まれています。カリウムには体の余分な水分を排出する働きがありますが、このときに体に溜まった余分な熱を放出してくれるのです。
日本のうなぎ食の歴史
高級食、しかし飲食チェーン店やスーパーでもお目にかかれる庶民食、と両方の顔を持つ鰻。この鰻、いつから日本で食べられるようになったのでしょうか?
縄文時代から鰻の食べ跡が
鰻のもっとも古い形跡は、5000年前の縄文時代。縄文時代の遺跡からうなぎの骨が発見されています。つまり日本ではこの頃からすでに、鯛などの魚とまじり、うなぎが食べられていたようです。また万葉集や風土器といった書物もうなぎについて述べていますし、醍醐天皇がうなぎを薬として食していたという記録も残っています。そして室町時代の料理書にはうなぎの蒲焼きの作り方が説明されており、この頃にはきちんと調理されたうなぎが食べられていました。これらの証拠が示しているように、うなぎは長年にわたって日本人に食べ続けられている食材なのです。
鰻の蒲焼の登場は江戸時代中期から
現在のような蒲焼としてのうなぎの登場は江戸時代中期以降の1750年前後であると考えられています。それ以前はぶつ切りのうなぎを調理したり、小さなうなぎに串を打ち、それを焼いて食べていました。今のようにタレをつけて食べるのではなく、味付けには味噌や酢といった調味料が使用されていました。
うなぎの蒲焼が現在の形に定着するようになったのは、千葉県銚子市にあるヒゲタ醤油の五代目当主、田中玄蕃(げんば)氏が、濃い口醤油を作り出した後です。これまで質の良い醤油は関西で作られたものが多かったのですが、薄味であることから江戸住民の中にはこの味を好まない人もいました。そんな中で田中玄蕃氏の作った醤油は濃い口であり、江戸人の舌を掴むことになります。この醤油をベースとした味付けの蒲焼が爆発的なヒットとなり、現在のうなぎの蒲焼のスタイルが完成されるようになるのです。
この頃からうなぎの蒲焼はご飯のおかずとして食べられるようになります。そして1820年以降、うなぎのかば焼きをご飯の上にのせたうな丼を提供するお店が増えていきます。このように現在のうなぎの食べ方は江戸時代に形作られたものなのです。
うなぎの産地と鰻の値段について
現在、天然のうなぎは非常に少なく、捕獲も困難です。そのため私たちが口にするうなぎのほとんどは養殖されたものです。
日本の鰻の養殖産地ランキング:鹿児島→愛知→宮崎→静岡
日本でうなぎの養殖が盛んな地域は九州です。国産のうなぎのほとんどは鹿児島県、もしくは宮崎県で養殖されたものです。また愛知県西尾市一色町は明治時代からうなぎの養殖を行っていた地域として有名です。温暖な気候であり、尚且つ豊かな自然に恵まれているために、美味しいうなぎが育つのです。また「うなぎ発祥の地」とも言われる静岡県もうなぎの産地です。富士山からの清水がうなぎの養殖に適しており、愛知県西尾市一色町と同じく100年以上前からうなぎの養殖が行われてきました。
海外の鰻生産は中国が世界でダントツ
外国に目を向けてみると、中国や韓国、そして台湾やオランダといった国でうなぎを養殖しています。ちなみに中国での生産量はダントツで、世界第2位の日本を10倍以上も上回っています。
うなぎって高い!うなぎの高騰の理由
もともとうなぎは高価な食べ物です。それでも一時期価格が低下し、比較的容易に食べられる食材へと変化していきました。しかし最近、うなぎの価格が再び高騰し始めたのです。先にも述べたように、現在私たちが食するうなぎのほとんどは養殖です。もしかすると「養殖うなぎなら、簡単に増やせるのでは?」と考えるかもしれませんが、実はうなぎの養殖に関しては大きな問題が存在するのです。それはうなぎの受精卵を人工的にふ化させることは非常に難しいというものです。つまり現在のうなぎの養殖はシラスウナギといううなぎの稚魚を捕獲し、それを育てているにすぎないのです。そしてシラスウナギの数は年々減少しており、捕獲が難しくなっているのです。このような理由により、うなぎの価格が高騰しています。
うなぎって本当にスタミナ付くの?鰻の栄養を知ろう
うなぎにはたくさんの栄養素が含まれています。以下は代表的なものです。
鰻のビタミンAで肌綺麗!免疫力アップ
皮膚や粘膜などを構成している上皮細胞の成長を促します。また白血球の生成を促し、免疫機能を高める効果も有しています。なんと鰻にはこのビタミンAが2,400μgも含有されているのですが、これは成人女性の必要量600μgを大きく上回っています。鰻で元気になる、というのはこういったところにあるんですね。
ビタミンB1、B2で糖をエネルギーにし疲労回復効果!
これらはうなぎの疲労回復効果に大きく関わる栄養素です。ビタミンB1、B2は摂取した糖質をエネルギーへ変換します。土用の丑の日(うなぎの日)にはご飯とセットになっているうな重やうな丼を食べることがお勧めです。なぜならご飯は分解されると糖質へと変化するために、うなぎのビタミンB1、B2が効率よくエネルギーを生産してくれます。鰻はビタミンB群も豊富で、よく豚肉に豊富と言われるビタミンですが、鰻も同じくらい含有しています。
ビタミンDで骨を元気に
ビタミンDはカルシウムの吸収を高める効果を有しています。また免疫力を高める作用もあります。
ビタミンEで体を強く!内側から綺麗に
強い抗酸化力を持っていることで知られるビタミンEには、老化を遅らせ作用があります。とりわけ脳、動脈、そして免疫システムの機能低下を防ぐ働きがあるために、健康維持にも欠かせない栄養素です。
EPAで血液サラサラ効果
抗血栓作用や血中脂質低下作用、そして血圧降下作用などを有しています。循環器系に問題がある人に摂取が求められる栄養素です。
亜鉛でビタミンの活性化
味覚障害の予防やビタミンAを活性化させる作用を有しているのが亜鉛です。またタンパク質の代謝を促すために、骨の強化や美しい髪の毛を作ることにも貢献します。
夏バテをする時期に鰻を・・・というのは実際の栄養に基づいているということがよくわかりますよね。次回の土用の丑の日には、日本の伝統に習って鰻にチャレンジしてみてはいかがですか?