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    伝統的工芸品とは?伝統工芸の特徴や種類、問題点を知ろう!

    日本の伝統工芸、と聞くとどのようなものを思い浮かべるでしょうか?
    京都府の西陣織の華やかな帯、石川県の輪島塗の美しい漆器、そして福岡県の愛らしい博多人形…どれも日本を代表する、素晴らしい芸術作品であり、それぞれ細やかな職人たちの技が生かされています。ちなみに、一般では「伝統工芸」と呼ばれていますが、法律で定められている名称は「伝統的工芸品」といいます。

    現在、経済産業大臣が指定する伝統的工芸品は全部で230品目あります。この中には、1年に一度ハレの日に使われるような人形から、毎日の生活に欠かせない漆器まで、様々なジャンルのものが含まれているのです。家の中を見回してみると、意外なところに置かれているものが、実は伝統的工芸品だった…なんてことがあるかもしれません。

    目次

    「伝統的工芸品」の定義とは?伝統工芸の5つの特徴

    この伝統的工芸品であると定義されるには、5つの大切な特徴があります。では、ここでひとつひとつ、そのポイントを見ていきましょう。

    伝統工芸の特徴①日常生活で使われるもの

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    まず1つ目は、主として日常生活で使われるものである、ということです。「とても芸術的で美しいが、何のために使うのかさっぱり分からない」というものは、いくら素晴らしいものであっても伝統的工芸品としては認められないのです。また、例えば雛人形は毎日のように使うものではありませんが、日本人の生活に密着し、一般家庭で使われているものであるため、伝統的工芸品であるということができるのです。

    伝統工芸の特徴②主要な部分が手作りであること

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    2つ目は、製造工程の主要部分が手作りである、ということです。意外にも、全て手作りである、という必要はないとされています。しかし、あくまでも伝統的工芸品の持ち味が損なわれない程度の補助的な工程では、機械を使ってもよいとされているのです。例えば、石川県の伝統的工芸品、九谷焼の製造工程では、まず石川県小松市などの陶石場で材料となる陶石を採石することからはじまります。この採石した陶石を細かく粉末状にする必要があるのですが、これはさすがに人の手では難しいので、機械の力を借ります。また、出来上がった陶磁器を乾燥させるときは、天日で乾燥させることもありますが、乾燥機を使うこともあります。このように、機械はあくまでサポート的役割として使われているのです。

    伝統工芸の特徴③伝統的技術または技法を使い作られていること

    3つ目は、伝統的技術または技法によって製造されている、ということです。この伝統的、とはおよそ100年以上継続している、ということを意味しています。つまり、代々受け継がれている技術を使って作られているからこそ、「伝統的工芸品である」ということができるのです。

    伝統工芸の特徴④原材料も伝統的なものであること

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    4つ目は、伝統的に使用されてきた原材料を使っている、ということが挙げられます。例えば、石川県の伝統的工芸品である輪島塗の漆器には、ケヤキやトチ、ヒノキといった良質な木材と地元産の珪藻土、そして精製された漆が使われています。人工的な黒い絵の具を使って染める…などということはなく、ひとつひとつの漆器が手間ひまかけて作られているため、どうしても値段は高くなってしまいがちですが、欠けてしまっても修理して使えるなど、一生モノとして付き合っていくことができるのです。

    伝統工芸の特徴⑤地域産業として生産されていること

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    最後、5つ目のポイントは、一定の地域で産地を形成している、ということです。伝統的工芸品として認められるには、一定の地域である程度の規模の製造者がいて、地域産業として成り立っていることが必要不可欠なのです。つまり、「ある村でひとりだけおばあさんがオリジナルな漆器を作っていて、他の人は誰も作り方を知らない」というような場合は、伝統的工芸品としては認められないのです。

    伝統的工芸品の種類

    ここまでは伝統的工芸品として認められるための5つのポイントを紹介してきましたが、ここからは、実際に伝統的工芸品にはどのような種類があるのかを見ていきましょう。
    伝統的工芸品を業種ごとに分けると、全部で15種類あります。

    織物、染色品、その他繊維製品、陶磁器、漆器、木工品・竹工品、金工品、仏壇・仏具、和紙、文具、石工品、貴石細工、人形・こけし、その他の工芸品、工芸材料・工芸用具の全15種類です。

    繊維類は各地にて特色が

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    織物は、西陣織や博多織、結城紬などが有名です。北海道に伝わる二風谷アツトウシや、沖縄県で生まれた読谷山ミンサーなど、各地域の特徴がそれぞれの織物に色濃く出ているものもあります。

    染色品は、日本三大友禅が有名です。京友禅・加賀友禅・東京友禅のことを、日本三大友禅といい、着物が好きな人なら必ず一度は耳にしたことがある言葉でしょう。御所車など華やかなモチーフで、絞りを使った模様が美しい京友禅、武家好みの落ち着いた色彩ながらも大胆に描かれた草花のモチーフが魅力的な加賀友禅、そして江戸っ子らしい粋を大切にし、「江戸友禅」という名でも知られている東京友禅…それぞれ眺めているだけでワクワクした気持ちにさせてくれます。そして、友禅染めの着物に袖を通すと、絹の肌触りが心地よく、和のお稽古を習っていなかったとしても、自然と美しく丁寧な所作になるはずです。

    その他の繊維製品では、京繍や加賀繍が有名ですが、同じ刺繍にもかかわらず両者のルーツはまったく異なります。まず京繍に関しては、794年に平安京ができ、刺繍をするための織部司という部門を置いたことが始まりとされ、時代が進み、江戸時代中期になると経済力を持った町人がこぞって素晴らしい刺繍を求めたそうです。加賀繍は、北陸地方に仏教が広まると僧侶の袈裟などに使われるようになり、武士たちに重宝されながら加賀で独自の発展を遂げた刺繍です。

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    食器は高級ラインから庶民的なものまで豊富

    陶磁器では、石川県の九谷焼や岐阜県の美濃焼が有名です。色鮮やかな九谷焼のお皿、そして温かみがある色合いの美濃焼の茶碗があれば、毎日の食卓がますます楽しいものになるかもしれません。

    漆器は、どれも同じように漆が使われ、それほど材料に違いはないはずですが、それぞれの産地によってかなり見た目が異なります。まず、輪島塗は室町時代から作られていますが、時代が進むにつれて、漆黒の茶器やお椀に豪華な蒔絵がつけられるようになりました。また、岐阜県の飛騨春慶では、独自の製法で透き通った漆を使用しているため、黒くないのです。サワラの木の美しい木目を生かして仕上げられています。

    東京(江戸)の伝統的工芸品

    伝統的工芸品、というと京都府や加賀地方のイメージが強いかもしれません。しかし、江戸時代になると京都の職人が江戸に集まり、そこで江戸っ子好みの「粋」を大切にした工芸品が作られるようになったのです。

    一見地味?見えないところに銭をかける江戸の伝統工芸

    その中には東京友禅や東京無地染といった染色品や、繊細な木工品である江戸指物などがあります。ものすごく華やか!というわけではありませんが、シックで上品な工芸品、という印象を受けます。“見えないところに銭をかける”というのが粋だったことが、このような特徴を産んだのでしょうか?

    また、ちょっと珍しいものとしては、東京銀器や東京アンチモニー工芸品があります。東京銀器の始まりは意外と古く、江戸時代中期に銀師と呼ばれる職人によって作られるようになりました。東京銀器のぐい飲みで一杯呑めば、とても粋な気分になれそうです。

    東京アンチモニー工芸品は、その西洋風の見た目からだと一見分かりづらいのですが、れっきとした伝統的工芸品です。そのルーツは明治時代初期に遡ります。アンチモニーとは、鉛、アンチモン、錫の合金であり、このアンチモニーを使用して動くオルゴールなどが作られています。

    海外の技術を真似て取り入れる作品も

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    また、現在では江東区亀戸のショールームで手軽に楽しむことができる江戸切子も、東京を代表する伝統的工芸品のひとつです。江戸切子は、江戸時代にビードロ屋の加賀屋久兵衛という人が、イギリス製のカットグラスを真似てガラスの表面に彫刻をしたのがはじまりとされています。明治時代になると、さらに本格的に生産されるようになりました。
    ところで、琥珀地の江戸切子を見たことはありますか?光の反射できらきらと輝き、いつまでも眺めていられそうなほど美しいのです。

    「伝統工芸を習いたい!」と思ったら、どうすればいい?

    さて、「日本が誇る伝統的工芸品の製作を体験してみたい!」と思ったら、どうすればよいのでしょうか?伝統的工芸品の中には、工房または直営店で体験教室を行っているところもあります。旅行に訪れる際には、その地方の伝統的工芸品を扱う工房が近くにないか、行く前にインターネットやガイドブックなどで調べておくとよいでしょう。また、工房によっては見学や体験をする場合は事前予約が必要なところが多いので、あらかじめお店に確認をしておくと安心です。

    東京で伝統工芸品を学べる場所

    また、東京にいても伝統的工芸品の製作を体験できるところがあります。例えば、東京友禅の工房「協美」では、一日友禅体験教室を開いています。また、表参道にある和のレッスンスタジオ「WAnocoto」では、初級から応用に分かれて友禅染めを学べるクラスがあります。

    最近ではホームページだけでなく、フェイスブックやインスタなどのSNSも充実させている工房や教室が増えてきています。特にインスタでは、伝統的工芸品の美しい写真や、製造過程の様子などを見ることができるため、「これ、やってみたい!」と思うものを見つけるのは、比較的簡単なのではないでしょうか。

    また、浅草にある「グラスファクトリー創吉」では、比較的リーズナブルな値段で江戸切子の製作を体験することができます。約1時間から1時間半ほどで自分の作品を作り上げることができるため、海外からの観光客にも、とても人気なのだそうです。自分で作った伝統的工芸品を大切な人にプレゼントしたら、きっと喜んでもらえることでしょう。

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    伝統的工芸品の課題や問題とは

    日本を代表する素晴らしい伝統的工芸品ですが、いくつかの課題や問題を抱えています。

    後継者不足が今後の伝統工芸品の存続に

    そのひとつが、後継者不足です。伝統的工芸品の継承は、一度途絶えてしまうと復活することが困難であり、多くの場合は製造工程が分業となっているため、どこかひとつの工程がなくなってしまうと、全体に影響が出てしまいます。また、中には「弟子になりたい」という人が見つかっても、伝統的工芸品の売り上げの減少から、新しい人を雇うお金がない、というケースもあるのです。

    しかし、最近では、「日本の伝統的な良いものを見直そう」という風潮があり、SNSでも伝統的工芸品の写真は多数掲載されています。便利なものが多くなった世の中ですが、昔のように、日本の一般家庭を伝統的工芸品が彩る、という日もまた現れるのかもしれません。

    原材料の高騰も材料見直しの原因に

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    また、原材料の不足や値上がりも問題として挙げられます。例えば、輪島塗などの漆器では材料として漆が必要ですが、日本国産の良質な漆があまり手に入らなくなってしまったため、中国から輸入をしなければいけなくなってしまいました。また、写真の曲げわっぱも、天然の秋田杉が枯渇目前という状況を迎えています。このようなことから、伝統的工芸品の原材料の確保というのも最優先課題であるということができるでしょう。

    買い手、使い手の増加が1番の応援に

    また、「需要を増やしていく」ということも伝統的工芸品の課題です。どんなに素晴らしいものであっても、使う人がいなければ産業として成り立ちません。現代では100円ショップをはじめ、安価でそれなりに良い品質のものがたくさんありますが、日本の伝統的な美しいものを日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?例えば、玄関に紀州漆器の花瓶にさした花を飾ったり、食事をした後は南部鉄器で淹れたお茶を楽しんだりすれば、日本の美しい工芸品を身近に感じることができ、日々の生活だけでなく心まで豊かになるのではないでしょうか。
    日本には、せっかく素晴らしい伝統的工芸品があるのです。「存在を知らなかった!」という人も、まずはSNSで検索してみてはいかがでしょうか?必ず、お気に入りの伝統的工芸品が見つかるはずです。今では産地に赴かなくても、オンラインショッピングで手元に届けることができます。また、伝統的工芸品を取り入れた暮らしの写真を撮って、インスタなどに載せるのも楽しいかもしれません。その写真を見て、「私も取り入れてみようかな」と思う人がきっと現れるはずです。日本の素晴らしい伝統的工芸品を、ぜひ積極的に広めていきましょう!

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