「浮世絵」は世界でも有名な日本の絵画です。しかし浮世絵の定義について知っている人は、もしかすると少ないかもしれません。この絵画には「現代風」「当世」という意味があり、いわゆる現代画のことをいいます。
しかしこの浮世絵が流行したのが江戸時代であったことから、今現在は浮世絵を現代画として見る人はいません。しかし趣のある浮世絵は多くの人の心を掴んでおり、今でも浮世絵ファンはたくさんいます。また外国人にも人気があり、浮世絵を見るために日本を訪れる人もいるほどです。
葛飾北斎をすみだ北斎美術館
このように世界的にも有名な浮世絵ですが、恐らく世界で一番有名な浮世絵画家は、葛飾北斎でしょう。
彼の名前は浮世絵に興味がない人でも知っています。「富嶽三十六景」や「山下白雨」といった作品は非常に有名であり、それらの名前を口に出しただけでも彼の作品が頭に浮かんでくるという人も少なくありません。
そして2016年11月22日、葛飾北斎の作品を展示した「すみだ北斎美術館」が墨田区立緑町公園のわきに建てられました。日本画の一つである浮世絵が展示してあるとあって、多くの人は風流な建造物を想像するかもしれません。しかし「すみだ北斎美術館」はいい意味で期待を裏切る建造物となっています。ではこの美術館が、どのようなところであるのかを見ていくことにしましょう。
建築から一級!モダンでおしゃれな建物のすみだ北斎美術館
先にも述べたように、この美術館は墨田区立緑町公園のわきに存在しています。最寄り駅であるJR両国駅を出て少し歩くと、光り輝くモダンでおしゃれな建物が見えてきます。これが「すみだ北斎美術館」です。この建物は世界的に有名な建築家の妹島和世氏によって設計されました。特徴的な外見はアルミのパネルで覆われた幾何学的なブロックを組み合わせて造られており、遠くからでもわかるほどの光を放っているのはこのブロックによります。また1階には講座室と図書室が備わっており、それらはガラスで囲われたおしゃれな造りとなっています。加えて同じ階にはミュージアムショップが存在し、地下に降りると会議室や所蔵庫などが設けられています。このような外見は葛飾北斎ファンのみならず、美術館巡りやおしゃれな建物を見学することが好きな人にとっても魅力的なものとして映るはずです。
常設展の内容は?すみだ北斎美術館の見学コース
この建物の4階に上がると、常設展示室に到着します。そこでまず目に入るのが、作品を制作する葛飾北斎と娘の阿栄の姿です。もちろんこれらは人形であり、当時の北斎がどのようにして作品を制作したのかを再現したものとなっています。北斎本人と阿栄の姿だけではなく、アトリエとして使用した当時の部屋の様子も再現されており、非常に興味深いものとなっています。
常設展示室には葛飾北斎の作品がたくさん飾られていますが、その作品を目にする前に、この常設展示室のおしゃれな雰囲気に興奮を覚えるはずです。浮世絵の展示ということで、和風の室内を想像なさる方が多いと思いますが、それとは全く異なる、モダンなスタイルが展開されています。
おしゃれな黒い壁に囲まれた室内は、近代美術館そのものです。また床には葛飾北斎ゆかりの地、隅田を流れる隅田川を思わせる光の筋が走っています。
子供も楽しめる!北斎漫画などの展示がユニーク
この展示室は、全部で7つのエリアによって構成されていおり、「すみだと北斎」をコンセプトとした作品を展示しているエリアから始まり、「習作の時代」から「肉筆画の時代」に至るまでの経過を、6段階に分けて展示しています。このように葛飾北斎の各期の代表作のレプリカが時代別の展示されており、さらには彼にまつわるエピソードも紹介されていることから、葛飾北斎の生涯について学ぶことができるのです。ちなみに会場の様々な個所にタッチパネルが配置されており、それらをタッチすることで作品の説明を読むことができます。また有名な「北斎漫画」はタッチパネルを操作し、ゲーム感覚で北斎の技法について知ることができるシステムとなっています。このように楽しみながら葛飾北斎について学ぶ機会を提供してくれるのが、「すみだ北斎美術館」なのです。
600点にも及ぶ葛飾北斎の貴重な展示品の数々
「すみだ北斎美術館」には、葛飾北斎が作成した貴重な作品の数々が展示されています。なぜならピーター・モース氏と楢崎宗重氏のコレクションが、ここ「すみだ北斎美術館」に展示されているからです。ピーター・モース氏という人物は、ホノルル美術館副主任研究員等を歴任した人物であり、葛飾北斎のコレクターとして有名でした。その数に関しては欧米における北斎の個人収集としては最大といわれるほどです。彼は1993年に他界しましたが、その後、遺族による協力を得て、総数600点に近い北斎作品や研究資料が「すみだ北斎美術館」に展示されることになったのです。
また日本で最初の浮世絵研究者として知られている楢崎宗重氏は、これまで浮世絵版画や浮世絵にまつわる様々な資料をコレクションしていました。これらの価値ある作品や資料は「すみだ北斎美術館」の開設を知った楢崎宗重氏によって平成7年に墨田区に寄贈されました。このようにピーター・モース氏、そして楢崎宗重氏のおかげで、葛飾北斎の貴重な作品や、彼に関する貴重な資料を「すみだ北斎美術館」において目にすることができるのです。
葛飾北斎についてさらに知りたい人は図書室へ
冒頭でも触れましたが、この美術館の1階は図書室となっています。ここには葛飾北斎を中心とした浮世絵に関する図書資料がたくさん収められており、彼や浮世絵に関する理解を深めることができます。「すみだ北斎美術館」を見た後、彼の作品に感銘を受けたという人や、もともと彼の大ファンであったという人にお勧めの場所です。ちなみに図書室は美術館開館日の9:30から17:30まで利用が可能です。しかし図書資料の持ち出しは禁止されており、図書室内のみでの閲覧となっています。それでもいくらかの資料は1枚10円でコピーすることが許されているために、必要なものはコピーして持ち帰ることができます。
すみだ北斎美術館の所在とアクセス、そして入場料金
「すみだ北斎美術館」の所在は〒130-0014、東京都墨田区亀沢2丁目7番2号です。電話番号は03-5777-8600で、受け付けは8:00から22:00となっています。ただし休館日の電話受付は行っていません。アクセスに関しては都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口から徒歩5分、JR総武線「両国駅」東口から徒歩9分、都営バス墨田区内循環バス「都営両国駅前」から徒歩5分、そして墨田区内循環バス「すみだ北斎美術館前(津軽家上屋敷跡)停留所」で降りると、目のが美術館となっています。入場料金は一般が400円、高校生、大学生、専門学校生、そして65歳以上の方は300円です。しかしこの割引を受けるためには、身分を証明するものを持参する必要があります。また中学生以下の年齢にある人は入場料金が無料になるなど、様々な取り決めが設けられていますので、入場料金に関しては事前確認することがお勧めです。
当然のことながらこの「すみだ北斎美術館」は、葛飾北斎の作品が好きであるという人や、彼の大ファンであるという人にお勧めの観光地です。しかしモダンな作りであることから、美術館が好きであるという人や若い人たちでも楽しめる場所です。もしかするとこの美術館の造りに興味があり、入館したものの、葛飾北斎の作品を見て、彼のファンになってしまうなんてこともあるかもしれません。入場料金もそれほど高くないことから、近隣にある両国国技館や江戸東京博物館などを観光した足で「すみだ北斎美術館」を訪れるという観光コースもお勧めできるものです。
他にも浅草周辺には博物館・美術館が豊富です。興味のある方は下記もチェック!